老人ホームに入るための手続きや施設選びの注意点について

高齢者向けの福祉施設として知られている老人ホームを利用するためには所定の手続きを踏む必要があります。老人ホームの多くは順番待ちの状態であり、本人や家族が希望してもその場で利用を許可されるとは限らないためです。

また、手続きの方法は施設ごとに異なるので注意する必要があります。老人ホームに入居する手続きの内容や施設選びの注意点について学びましょう。

関連記事:老人ホームを言い換えで把握しておきましょう

何よりも本人が利用したいと考えることが重要

老人ホームは名前の通り、高齢者を対象にした福祉施設です。複数の高齢者が共同生活を営む場として運営されています。各地に大小様々な規模の老人ホームがあり、運営の方向性も施設ごとに異なります。しかし、いずれの施設も高齢者が利用する際は本人の意思を真っ先に確認する点は共通しています。

老人ホームなどの高齢者施設は家族の負担を軽減する目的もあります。在宅介護は家族にとって気の休まる時が無い、非常に過酷なものであるためです。しかし、高齢者施設はあくまでも高齢者本人が心身のケアを図るために利用する施設です。

本人が施設を利用したい、生活の場を施設に移したいと思わなければ利用させることはできません。そのため、どのような施設でもまずは高齢者に利用する考えがあるのかを確認します。

本人が施設を利用したいと明確に意思表示して初めて、利用手続きを進めることが可能です。家族など周囲の人が無理強いをすることはできないので、老人ホームの利用については対象である高齢者とよく話し合って決めることが重要になります。

老人ホームの運営内容を確認することが入居後のトラブルを避ける条件

ひと口に老人ホームと言ってもその運営内容は多彩です。単に複数の高齢者が共同生活を営む場であったり、要介護認定された高齢者を施設職員が介護するなど施設ごとに異なります。施設によっては要介護の数値が入居の条件になっている所もあるので事前の確認が不可欠です。

また、入居した高齢者の体調が悪くなったり、要介護の数値が増えると退去しなければならない施設もあります。たまたま空き室があった、費用が安く済むなどの理由で安易に入居を決めてしまうと後になってからトラブルに発展する可能性があります。

そうならないためにも事前の情報収集を入念に行うのが高齢者の入居を考えている家族の務めです。入居後の健康管理は特に重視すべき点と言えます。高齢者は加齢や病気によって体力が低下しているので、些細な体調不調が重篤化する可能性も否定できません。

そのため、万が一の際に迅速な対応ができる施設が望ましいと言えます。医療機関が運営している施設なら職員に医師や看護師が含まれていることが多いので健康管理の面についてはほとんど心配がありません。

また、特定の医療機関と連携して入居者の健康管理を適切に行っている施設も安心できると言えます。高齢者の健康管理は入居を決めるかどうかの重要なポイントなので確認を怠ってはいけません。

仮入居で施設の雰囲気を確認する方法もある

老人ホームに入居したが雰囲気が合わないというトラブルは少なくありません。外から見たら快適な施設に思えたのに入居してみると居心地が良くない所だったという話は老人ホームにはよくあることです。リラックスして暮らすことができる自宅から複数の高齢者と共同で生活する老人ホームに移ったことで、緊張や不安を感じてしまうのは誰にでもあることです。

環境の変化に対する不安が施設への不満に変わることが多いので、時間が経てば自然に解消されます。しかし、中には本当に施設の雰囲気に馴染めず、大きな不満を抱えてしまうケースもあります。すぐにでも他の施設に移りたいと考えるのが普通ですが、多くの老人ホームは順番待ちの状態なので移るのは容易ではありません。

入居した後になってから居心地の悪さに悩むというトラブルを避けるには仮入居を利用するのが効果的な方法です。仮入居は正式な入居契約を結ばず、一定期間に限って入居する行為です。高齢者が施設の雰囲気を知ることが目的なので、自分には合わないと感じたら入居契約を断ることもできます。

仮入居であっても施設を利用している状態なので一定額の入居費を支払うことになる点は注意しなければいけません。

老人ホームに入居すると住所移動の手続きが必要

老人ホームへの入居手続きは施設ごとに多少の違いがありますが、施設が用意した書類にサインをするのが基本的な方法です。入居者が用意する物は家族など身元引受人の印鑑や入居する高齢者本人の戸籍謄本、住民票などがあります。

老人ホームへの入居は引っ越しの一種とも言えるので、高齢者本人の住所を変更するのが普通です。期間が決まっているショートステイなど一部の例外はありますが、基本的には老人ホームへ入居するなら住所を老人ホームの所在地に変更する必要があります。

住所を自宅のままにしておくと郵便物などが届かないので注意しなければいけません。また、介護保険の手続きを行うための窓口は高齢者の住所に該当する市町村です。そのため、手続きの手間を省く意味でも住所を変更するのが得策と言えます。

施設へ入居することが高齢者の安全な暮らしに繋がる

かつては高齢者の介護は家族が行うものという考えが一般的でした。高齢者を老人ホームに入居させるのは冷たい行為と非難されたこともありますが、実際は設備が整っている老人ホームで暮らした方が高齢者にとっては安全であると言っても過言ではありません。

在宅介護の問題として、体が弱っている高齢者には適さない環境である点が挙げられます。住み慣れている自宅であっても、高齢者にとっては決して安全な場所とは言い切れません。わずかな段差で転倒したり、狭い廊下やトイレで身動きが取れなくなる可能性があります。

また、家族による介助も素人作業なので思わぬ事故に見舞われるおそれがあります。そのため、在宅介護は必ずしも最善の選択とは言えないのです。老人ホームは介助作業を適切に行うことができるように空間を広く取った構造になっています。

また、手すりなどの補助具も充実しているので、転倒のおそれもほとんどありません。高齢者が安全に暮らすなら自宅よりも老人ホームのような高齢者施設が最適と言えます。

老人ホームに関する正しい知識を持つことが重要

老人ホームは高齢者が安全に暮らすための場なので、入居を検討する際は施設に関する正しい知識を持つことが何よりも重要と言えます。高齢者にとって居心地が良い所か、病気になった際は適切なケアを受けられるのかなど、様々な疑問点に対する明確な説明ができる所を選ぶように心がけます。

高齢者の意思を尊重しつつ、安全性を第一に考えるのが正しい施設選びです。